中田浩二が移籍金なしでマルセイユへ

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/headlines/20050127-00020792-jij-spo.html
結局鹿島が移籍金をもらわない事で中田を突き放したという
捉え方でいいのか。


当初マルセイユの提示した金額は8千万円。これに対し、移籍係数
から算出した約3億6千万円を要望した鹿島のそれとは大きく隔たりが
あった。
このまま平行線をたどって最後には鹿島が譲歩、とは思っていたが
それよりもむしろ諦めの体か。


ここで今オフに行われた中で気になった以下の移籍を考えてみる。

1.複数年契約中の移籍−−−−海本幸治郎(名古屋→新潟)の場合
2.移籍期間中の国内移籍−−−山瀬功治(浦和→横浜FM)の場合
3.  〃   国外移籍−−−中田浩二(鹿島→マルセイユ・仏)の場合

1.海本幸治郎の移籍
名古屋から新潟へ移籍した海本幸治郎は日本ではあまり例を見ない
複数年契約を結んでいた選手だった。2年契約中の2年目を迎える年に
移籍が決まり、未だにその理由が語られていないのでサポーターと
しては不信感が募っている。
この場合全世界共通で「違約金」として移籍金が発生する。
従って公表されていないが、新潟がこれを支払っていれば規約上は
問題ない事になる。




2.山瀬功治の移籍
浦和から横浜FMへ移籍した山瀬の場合、「移籍金2億円(推定)」
という額がしっかり報道された。
山瀬が契約期間内だったのか、契約満了していたのかは調べ不足で
分かりかねるが、後者でも移籍金が発生するのがポイントだ。
世界では契約満了選手の移籍に関しては移籍金が発生しない*1


しかしJリーグは国内独自の規律を設けており*2、契約期間満了後も
30ヶ月は前所属クラブが移籍金を受け取れる事になっている。
このため、山瀬の移籍には移籍金が発生した。2億円はおそらく
移籍係数に準じた額である。


彼も一見わがままな移籍のように思えるが、しっかりと移籍金を
もたらす事で最低限の例を尽くしている。




3.中田浩二の移籍
鹿島からフランスのマルセイユに移籍が決まった中田の場合は、
移籍先が海外のクラブである事がポイントになる。


上にニュース記事として紹介したとおり、中田は移籍金0での
移籍が決定した。
これは通常ならば契約期間満了の選手が移籍する際の結果だが、
彼は1月31日まで契約が残っていた。つまり現時点での移籍ならば
鹿島側は移籍金を受け取る資格があった。
それではマルセイユが提示した8千万円(鹿島が望む金額でなかった
にしろ)を何故鹿島が受け取らなかったのか。


鹿島は、移籍係数から鑑みて3億6千万円を想定。8千万円を提示した
マルセイユとの間には大きく溝があったのは事実だ。
しかし、契約満了後では一切移籍金が入らない事を考えれば、
上積み交渉をするのは当然としても、相手が応じないようであれば
例えどんなに買い叩かれるような額でも受け取るのが普通だ。
鹿島はこれを拒否したのだから分からない。


ここで欧州の移籍にも言及しておくと、欧州の(世界の)
トランスファーマーケットは1/31正午まで開かれている。
一見するとマルセイユがフリートランスファーで中田を獲得する
のは無理のは難しく、鹿島は要求をはねつければ少なくとも
移籍金0での国外移籍は免れるように思える。
しかしこれが上で述べた「国外移籍がポイント」である。


欧州では

「未契約選手」であれば2/1以降も自由に獲得できる

という決まりがあり、中田の場合がこれに当てはまる。
鹿島側が移籍金に納得しなくても、中田が1/31が終わるまでに
契約更新しなければ未契約選手として世界中自由に移籍する事が
出来るのだ*3
従って、鹿島が強気に出られる(移籍金交渉出来る)のも限りが
あった訳だ。


それにも関わらずマルセイユは移籍金を支払うと言った。
ボスマン判決以降、欧州では有力選手が破格の移籍金で移籍する
ケースが少なくなくなった。これはサッカー界全体の財政状況の
悪化だけが問題ではなく、「契約満了後にフリーで」という条件を
使ってより良いクラブに移籍しようとする選手が増えたためである。


最たる例として、イングランド代表FWのオーウェンが移籍した際、
レアルマドリーからリヴァプールへ支払われた移籍金はわずか
約16億円(+ヌニェス)だったと言われている。
もちろんオーウェンの市場価値はもっと高額なものだが、
リヴァプールにとって不幸な事に、オーウェンは'04年1月の
時点で残り契約期間を半年としていた。
欧州では契約期間内に次期契約が為され、クラブは選手に対して
移籍金の「保険(鎖)」をかけるのが普通だが、待遇改善や移籍を望む
選手はぎりぎりまで契約しない事でクラブに圧力をかけたり、
他クラブへのアピールとする。
オーウェンはここ数年強化しつつも優勝までたどり着けない
クラブの現状に満足しておらず、クラブ側も移籍金が取れる
うちに放出となったわけだ。


今回の鹿島の場合、経営者としては最悪な選択肢をとった。
選手に職業(所属クラブ)選択の自由があるのは当然だが、
クラブ側も有力選手は複数年契約でつなぎとめる*4などしないと、
プロ野球のように選手が有力クラブや海外クラブへ流れるのを
阻止出来なくなる*5


プロスポーツ選手が向上を望むのは理想であるが、クラブへの
愛着が薄れている現状は悲しいとも言える。どちらの良し悪しを
決める事は不可能だが。




<追記>
id:souno418:20050127さんのおっしゃる事に全く同意ですね。
各所で

マルセイユが悪い

のように書かれているのを見受けますが、鹿島は残留させたかったので
あればもっとうまくやるべきでしたね。
id:souno418さんに一方的に同意してるのであって、本サイトに
おける文面内容の非はid:souno418さんにはありませんのであしからず。

*1:'95年ボスマン判決

*2:ボスマン判決後も対応していないと言った方が正確

*3:もちろん国内移籍であれば30ヶ月間は移籍金が発生

*4:サッカーの場合高額年俸の鎖は掛けづらい

*5:中位以下のクラブは特にそうだ